汎アフリカ大学院と協働する資源植物科学イノベーション研究拠点

拠点形成事業(アジア・アフリカ学術基盤形成型)

更新情報・お知らせ

Yosef Hamba TOLA さんのレポート

岡山大学資源植物科学研究所・谷 明生 准教授のもとで研究活動を行ったYosef Hamba TOLAさんから、研究活動報告及び滞在記をいただきました。

Yosef さんの研究活動報告及び滞在記はこちらをご覧ください。

受入期間:2015年6月2日〜7月30日

Yosef さんの研究活動

6月2日に来日したYosef Hamba TOLAさんが岡山大学資源植物科学研究所・谷 明生准教授のもとで行った研究内容について紹介します。

受け入れ期間: 2015.6.2-2015.7.30の2ヶ月間

Yosefさんの研究紹介:

Chemotaxis fishing: specific enrichment technique of bacteria from environment based on their mecacraft broyeur thermique

YosefはエチオピアのDire Dawa Universityの学士を卒業し、その後Pan African Universityの大学院を修了しています。現在はJICAがケニアのJKUATを拠点としてサポートしているAFIRCA-ai-JAPAN ProjectのResearch Fellowという立場です。マメ科植物の根粒菌についての研究を行っています。

来日時倉敷駅に迎えに行くと、同じ便で来たPaulと一緒に、日本のインフラのテクノロジーに困り果てたと言っていました。聞くところによると、エチオピアの実家には電気も来ていないということなのでさもありなん、というところでしょうか。なお飛行機での気圧変化で歯痛がおこり、悶絶していたそうです。私にも経験がありますが。

Yosefには、このところ当研究室で精力的に研究している、細菌の走化性(Chemotaxis)に関する新しい実験を試みてもらうことにしました。細菌には好ましい物質(多くの場合炭素源となるもの等の誘引物質)の濃度変化を感知し、水中での遊泳の方向を制御して、最終的に誘引物質に集まる性質(走化性)を持っています。彼のテーマは、2ヶ月という短期間と言うこともあり、環境中からこの走化性を利用して細菌を特異的に集めることにチャレンジしました。この方法をChemotaxis Fishingと名付けました。実験条件の確立に少し時間がかかりましたが、確立後は精力的に多くのサンプルを使って実験を行っており、土日も休まず実験していました。

結果は現在彼が執筆中の論文に詳しく書きますが、簡単に言うととても上手く行き、環境中からメタノールに集まる菌を濃縮することに成功しました。分離した細菌の同定の仕事は残っていましたがこちらで片付け、今年中ぐらいには投稿したいと考えています。

Yosefは滞在中ゲストハウスに宿泊し、Paulと共にいつも夕食を作って食べていたそうです。彼のエチオピア料理を試す機会はありませんでしたが、ネットで調べるところによるとエチオピア料理はかなり手の込んだものもあり、ケニアとは少し違うようです。というかかなり違うようです。日本の寿司・天ぷらなどを楽しんでいました。

再来日を強く希望しており、国費留学生応募を考えていますが、エチオピアならではの問題もあり、そう簡単ではなさそうです。

最後に、Yosef Hambar TOLA氏の滞在を可能にした学術振興会(「アジア・アフリカ学術基盤形成事業(代表: 岡山大学資源植物科学研究所・教授・坂本亘:汎アフリカ大学院と共同する資源植物科学イノベーション研究拠点」)に感謝いたします。

(文責:谷 明生)

Paul さんの研究活動

6月2日に来日した Paul Kipkemboi TELENGECH さんが岡山大学資源植物科学研究所・鈴木信弘教授のもとで行った研究内容について紹介します。

受け入れ期間:6月1日から7月31日までの2ヶ月間

Paul さんの研究紹介:

Molecular characterization of partitiviruses infecting a phytopathogenic fungus, Rosellinia necatrix by Paul Telengech.

白紋羽病菌、Rosellinia necatrixは子のう菌に分類される重要植物病原菌です。400種以上の植物に感染することが報告されていて、果樹等の多年生作物に大きな被害をもたらす。白紋羽病菌は植物の根に感染し、枯死させる土壌生息菌で、その防除は極めて困難である。1990年代から、ウイルスを用いた生物防除(ヴァイロコントロール)を目指し、白紋羽病菌から菌の植物に対する病原性を衰退させるウイルスの探索が行われた。生物防除因子として潜在力を有するウイルスの同定が期待されている。

Paul Telengech氏(ジョモケニヤッタ農工大学の研究生)は2015年6月2日から7月30日まで岡山大・資源植物科学研究所に滞在し、農研機構・果樹研究所・兼松博士と受入れ教員・鈴木(岡山大学・資源植物科学研究所・植物/微生物相互作用グループ)が進めている共同研究「ヴァイロコントロールを目指した白紋羽病菌のウイルスの性格付け」の一端を分担した。Telengech氏は、久野女史(植物/微生物相互作用グループの)と共にPartitiviridaeという一群のウイルスグループに属するウイルス数種の配列決定を試みた。白紋羽病菌野外分離株計6菌株、Ba、Bb、CENI-Rb001、 CENI-Rb002、 CENI-Rb003、 CENI-Rb004から分離されたパルティティウイルス6種の解析を進めた。まず、これら3菌株からdsRNAを精製し、cDNA化、配列解析を進めた。末端配列についてはRLM-RACEを行った。Bb株から分離されたウイルスについては、ほぼ全長のゲノム配列の決定に成功した。他のウイルスについては部分配列を得た。解析したウイルスは、新規ウイルスと推定された。

最近、無病徴感染すると考えられてきたパルティティウイルスが、宿主菌に病気を引き起こす例がここ数年報告されてきた。その中のいくつかはヴァイロコントロール因子としての有効性が示唆されている。本研究でゲノム配列が決定されたウイルスについても、今後、その生物学的性状を調べる必要がある。また、同時に未決定のゲノム配列も決定する必要がある。

Telengech氏は、研究室にも馴染み、倉敷での生活を楽しんだようだ。すし、トンカツ、天ぷらを初めとする日本食もすっかり気に入ったようだ。しかし、温泉には馴染めないようだ。最来日を強く希望しており、国費留学生応募を考えている。

最後に、Paul Telengech氏の滞在を可能にしたに感謝する。学術振興会(JSPS)「アジア・アフリカ学術基盤形成事業(代表:岡山大学・資源植物科学研究所・教授・坂本亘):汎アフリカ大学院と協働する資源植物科学イノベーション研究拠点」

(文責:鈴木信弘)

事業目的

[研究交流目標]
アフリカ、特にケニアを核とする東アフリカでは豊富な労働力と地下資源を背景に経済も成長し、欧州や中東への一次産品の供給地としてだけではなく、将来の巨大市場としても注目されている。食へのニーズも、かつてのような飢餓を脱するための単なる量的拡大ではなく、生活水準の改善に向けた質的向上と多様性に目が向けられつつある。しかし、東アフリカ耕作地の多くは乾燥地帯、酸性土壌地帯を含み、不適な栽培技術による病害多発、肥料枯渇などが作物増収の大きな障壁となっており、イネなど主要穀類を輸入に頼っているのが現状である。ここ最近顕在化する地球環境の変動も作物の安定供給に追い討ちをかけており、フードセキュリティの観点からも次世代型対応型の作物開発は東アフリカの重要な研究課題の1つといえる。

【汎アフリカ大学・東アフリカ高等教育拠点PAU/JKUATにおける資源植物科学研究の展開】

上に述べた諸問題をかかえながらも成長を促すための学術的な方策として、アフリカ連合(AU)は、最近、汎アフリカ大学院大学(Pan African University, PAU)を立ち上げた。PAU構想ではアフリカを6地域に分け(次頁参照)、各所にアフリカに適合した科学技術を主導する大学院を設立し、2012年から順次開校している。PAUの中で、ケニア・ジョモケニアッタ農工大学(Jomo Kenyatta University of Agriculture and Technology, JKUAT)は、研究基盤や実績のある大学として東アフリカの高等教育拠点に公募で採択され、農学と工学に軸足を置いた基礎科学研究、イノベーション研究の大学院PAU/JKUATが2012年開学した。現在、アフリカ各地から70名の優秀な大学院生が集まっているが、実習など研究指導の基盤がまだ脆弱である.

このような状況を踏まえ、本申請プログラムでは、PAU/JKUATと連動しながら次世代作物開発に取組む「資源植物科学」研究拠点ネットワークを組織化し、育種、土壌、作物、園芸、応用微生物学分野での若手研究者育成と研究を3年間で進める。

【本プログラムの目標 -PAU/JKUATでの若手研究者育成と研究ネットワーク構築・イノベーション創出】

PAUの東アフリカ拠点となるJKUATは1980年代にJICA支援事業を基に設立され、国内トップレベルの大学に成長した経緯があり、日本との人的交流に長い歴史がある。本プログラムでは、この長い交流実績・人脈を活用しながら、岡山大学資源植物科学研究所が進める「植物遺伝資源・ストレス科学」研究を東アフリカで実践するための研究拠点を構築し、日本側研究者がPAU/JKUATと連携しながら若手を育成し、作物生産性向上に直結する系統選抜や生産技術開発に関する共同研究の実現を目標とする。この拠点を通じて新たな作物の開発利用のための研究を東アフリカで加速し、アフリカ型イノベーション実現へのロードマップを作成する。

[研究交流計画の概要]

①資源植物科学研究所(植物研)の次世代作物共同研究コア・国際的新展開グループ(後述)が統括し、PAU/JKUATの大学院生など若手を積極的に招へいし、植物研のストレス研究ユニットで共同研究を行う(各ユニット1名x3ヶ月/年度、年度毎5名以上)。ケニアとウガンダで植物ストレス耐性、収量増加や品質向上につながる次世代対応型作物を育成するために必要な「育種学」「植物栄養学」「植物生理学」「園芸利用学」「微生物利用学」を基盤とする資源植物科学の共同研究を行う。

②各年度に資源植物科学に関するワークショップを開催する(100人規模)。ケニアではH26,28年度に開催し、周辺国の関係研究者も招待して交流を東アフリカに拡大する。日本では27年度に開催し、植物ストレス科学研究ネットワークと連動して交流を進める。毎年10月に岡山大学で「ケニアデー」を開催し、若手中心の研究交流・討論会で国際交流を定例化する。

③PAU/JKUATでの集中講義形式による大学院生指導を日本側研究者が中心に行い(年数回)、上記①と連動した人材育成を目指す。JKUATだけでなく、ケニア農業研究所やウガンダのマケレレ大学・ウガンダ農業研究所とも交流を行い、ネットワークを拡げて東アフリカ作物生産の問題解決に取組む。28年度には関係研究者による成果報告会を行って継続的な交流を進めていく。

[実施体制概念図]

名称未設定1

実施組織

日本側実施組織

拠点機関:岡山大学

実施組織代表者(所属部局・職・氏名):学長・森田 潔

コーディネーター(所属部局・職・氏名):資源植物科学研究所・教授・坂本 亘

協力機関:筑波大学、名古屋大学、京都大学、帯広畜産大学、鳥取大学、くらしき作陽大学、岡山理科大学

事務組織:資源植物科学研究所事務部

コアメンバー:坂本 亘、鈴木 信弘、前川 雅彦、谷 明生

相手国側実施組織(拠点機関名・協力機関名は、和英併記願います。)

(1)国名:ケニア

拠点機関:(英文)Jomo Kenyatta University of Agriculture and Technology

(和文)ジョモケニアッタ農工大学

コーディネーター(所属部局・職・氏名):(英文)

Horticulture Department, Lecturer, Hunja MURAGE

協力機関:(英文)Pan-African University

(和文)汎アフリカ大学院

(2)国名:ウガンダ

拠点機関:(英文)Makerere University

(和文)マケレレ大学

コーディネーター(所属部局・職・氏名):(英文)

College of Natural Sciences, Professor, Hannington ORYEM-ORIGA

協力機関:(英文)National Crops Resources Research Institute

(和文)作物資源研究所

関連リンク


岡山大学


岡山大学 資源植物研究所

ジョモケニアッタ農工大学

日本学術振興会

岡山大学 大学院 自然科学研究科

岡山大学 農学部

活動実績2014

・2014年度活動概要

岡山大学を拠点として組織化された「国際的新展開グループ」は、これまでの事業を通じてジョモケニアッタ農工大学(JKUAT)と研究協力体制を築いており、2014年度からは、ケニア側では汎アフリカ大学院(PAU)との連携を開始しました。またPAUに協力するJICAではAfrica-ai-JAPAN project が立ち上がっており、関係する専門員とも連携しながら交流を進めました。
このように交流体制を築けたことにより本事業に参加しているケニア人研究者のFiona Wacera氏は「ABEイニシアティブ修士課程インターンプログラム」(JICA事業)に採択され岡山大学大学院へ進学し、若手育成が着実に進んでいます。
また2014年度の交流活動としてケニアでのシンポジウム1件、日本国内でのセミナーを2件開催しました。また5名の若手研究者を相手国側(JKUAT、ケニア農畜産研究機構)から招へいし共同研究を行いました。

ケニアで開催したシンポジウム

11月13日〜14日に行われたジョモケニアッタ農工大学で開催される定例学術会議「第9回ジョモケニアッタ農工大学シンポジウム」の開催中に国際シンポジウムとして「Innovative Agricultural Sciences, Technologies and Global Networking for Sustainable Food Production and Security」を開催しました。
本事業参加者12名(日本人8名、ケニア人2名、ウガンダ人2名)と一般参加者を合わせて約250名が参加し、日本側の研究者が最先端の植物ストレス科学に関する研究発表を行うとともに、ケニア、日本双方の研究者がこの数年間で得られた共同研究の成果を発表しました。
本シンポジウムは作物科学だけでなく、農業工学や気象学など農業に関する様々な分野の研究者が集まる学術会議であり、本事業によって行われた国際共同研究の成果発表を、ケニア国内外の様々な分野の専門家へ情報発信することができました。

日本国内で開催したセミナー

10月10日に開催したケニアデーでは、59名の参加者が集まりました。
日本国側拠点の岡山大学・資源植物科学研究所の最相大輔助教による基調講演と2分間のフラッシュトークの後、本事業に参加しているケニア人研究者を含めた19名がポスター発表を行い、ケニア日本双方の若手研究者が中心となって意見交換を行いました。

2月23日に、本事業と岡山大学環境生命科学研究科の国際異分野共同研究の共催により、国際セミナー「大学がアフリカで何ができるか?」を開催し、28名の参加者が集まりました。
筑波大学、帯広大学から講師を招き、各大学が行っているアフリカをフィールドとする研究教育プログラムの活動内容紹介がありました。
各大学の研究教育国際プログラムの活動を知る機会となり、今後の拠点活動の参考になりました。
また、各事業の担当者の意見交換の場を設けることで相互の理解が深まり、アフリカにおける国際交流の問題点なども確認できました。

・研究交流(セミナー・シンポジウムなど)

ジョモケニアッタ農工大学・工学部長の表敬訪問について

ケニアデー

2014年度のケニア訪問とシンポジウム開催について

岡山大学ケニア同窓会の設立

国際特別セミナー

・共同研究

Kimani Kanyouji SHADRACK さんの研究活動

Mwashasha Rashid MWAJITA さんの研究活動

Zephania Raduma ODEK さんの研究活動

Joseph Njuguna GICHUHI さんの研究活動

Jane Wamaitha MWATHI さんの研究活動

活動実績2012


「2012年度のケニア訪問とシンポジウム開催について」
AASPPプログラムも最終年度を迎えますが、2012年度は2010年度に引き続き、ジョモケニアッタ農工大学(JKUAT)で作物ストレス科学に関するシンポジウムを開催しました。本シンポジウムは、第7回JKUAT Conferenceを私達が共催する形式で行われ、約300人の参加者を得て、研究紹介をするだけでなく、ケニア研究者・大学院生との交流の場を先方に設けていただきました。今回は、岡山大学(植物研・農学部)から6名の教員・大学院生が参加し、研究成果を報告しました。今回の訪問では、これまで4年間に行われた各種の交流事業で植物ストレス科学研究に関するケニア側の興味も定着しており、今後の更なる交流にも期待ができそうです。

ケニア訪問では、JKUATキャンパスだけでなく、ナイロビ市内の「JSPSナイロビ研究連絡センター」、「JICAケニア事務所」なども訪問させて頂きました。大学では、Imbuga 学長代理、Kahangi副学長代理の表敬訪問をはじめ、大学内の施設訪問や学生との意見交換も行いました。

表敬訪問・大学視察・およびシンポジウム開催の風景

参加者からのレポート
坂本 亘「JKUAT Conference 2012 およびケニア滞在記」
鈴木 信弘「The Seventh JKUAT Scientific Technological and Industrialisation Conference に参加して」
植木 尚子「ケニア滞在報告」
平山 隆志「第7回JKUAT国際学術会議出席報告書」
Gichuhi Emily Waringa 「JKUAT’s role in empowering researchers and supporting research towards food security and sustainable development」

シンポジウム案内など
「ケニアで植物ストレス科学の国際シンポジウムを開催します」
「2012年10月19日IPSR Kenya Day 2012を開催いたしました」
「2012年10月19日15:00~IPSR Kenya Day 2012を開催いたします」

2012年度来日研究者
「ジョモケニアッタ農工大学から副学長が来日しました」
「ジョモケニアッタ農工大学から来日した大学院生(Mwashasha Mwagitta)からレポートをいただきました」
「ケニア国立農業研究所から来日した研究員(Patrick Ooro)からレポートをいただきました」
「ケニアから2名の研究者が来日しました」
「ジョモケニアッタ農工大学から来日した大学院生James Ngeruからレポートをいただきました」
「ジョモケニアッタ農工大学から来日した大学院生Julius Megweruからレポートをいただきました」
「ジョモケニアッタ農工大学から大学院生が来日しました」