Paul さんの研究活動

6月2日に来日した Paul Kipkemboi TELENGECH さんが岡山大学資源植物科学研究所・鈴木信弘教授のもとで行った研究内容について紹介します。

受け入れ期間:6月1日から7月31日までの2ヶ月間

Paul さんの研究紹介:

Molecular characterization of partitiviruses infecting a phytopathogenic fungus, Rosellinia necatrix by Paul Telengech.

白紋羽病菌、Rosellinia necatrixは子のう菌に分類される重要植物病原菌です。400種以上の植物に感染することが報告されていて、果樹等の多年生作物に大きな被害をもたらす。白紋羽病菌は植物の根に感染し、枯死させる土壌生息菌で、その防除は極めて困難である。1990年代から、ウイルスを用いた生物防除(ヴァイロコントロール)を目指し、白紋羽病菌から菌の植物に対する病原性を衰退させるウイルスの探索が行われた。生物防除因子として潜在力を有するウイルスの同定が期待されている。

Paul Telengech氏(ジョモケニヤッタ農工大学の研究生)は2015年6月2日から7月30日まで岡山大・資源植物科学研究所に滞在し、農研機構・果樹研究所・兼松博士と受入れ教員・鈴木(岡山大学・資源植物科学研究所・植物/微生物相互作用グループ)が進めている共同研究「ヴァイロコントロールを目指した白紋羽病菌のウイルスの性格付け」の一端を分担した。Telengech氏は、久野女史(植物/微生物相互作用グループの)と共にPartitiviridaeという一群のウイルスグループに属するウイルス数種の配列決定を試みた。白紋羽病菌野外分離株計6菌株、Ba、Bb、CENI-Rb001、 CENI-Rb002、 CENI-Rb003、 CENI-Rb004から分離されたパルティティウイルス6種の解析を進めた。まず、これら3菌株からdsRNAを精製し、cDNA化、配列解析を進めた。末端配列についてはRLM-RACEを行った。Bb株から分離されたウイルスについては、ほぼ全長のゲノム配列の決定に成功した。他のウイルスについては部分配列を得た。解析したウイルスは、新規ウイルスと推定された。

最近、無病徴感染すると考えられてきたパルティティウイルスが、宿主菌に病気を引き起こす例がここ数年報告されてきた。その中のいくつかはヴァイロコントロール因子としての有効性が示唆されている。本研究でゲノム配列が決定されたウイルスについても、今後、その生物学的性状を調べる必要がある。また、同時に未決定のゲノム配列も決定する必要がある。

Telengech氏は、研究室にも馴染み、倉敷での生活を楽しんだようだ。すし、トンカツ、天ぷらを初めとする日本食もすっかり気に入ったようだ。しかし、温泉には馴染めないようだ。最来日を強く希望しており、国費留学生応募を考えている。

最後に、Paul Telengech氏の滞在を可能にした学術振興会(JSPS)「アジア・アフリカ学術基盤形成事業(代表:岡山大学・資源植物科学研究所・教授・坂本亘):汎アフリカ大学院と協働する資源植物科学イノベーション研究拠点」に感謝する。(文責:鈴木信弘)

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